過去との遭遇


 ひょんなことからヒトを殺してしまったので、どこかに埋めることにした。
 しかし、どこに埋めたものか、皆目見当がつかない。
 とりあえず愛車に乗り込み、最初に行き着いたところに埋めることにした。
 目的地を設定せず、適当に出発ボタンを押すと、我が愛車は勢いよく発車した。


「……おい、何かでてきたぞ」
「これ、骨じゃあないか? しかもヒトの……」
「何だって!? 掘り起こせ! そーっと、そーっとだぞ……」
 白いヒトの骨を発見した彼らは、喜びの声をあげた。
 彼らのものよりも一回り小さく、あごの突き出た、脳の部分が小さい頭蓋骨……。
 これこそ、彼ら考古学者が探していた、原始の人類の骨だろう。


 私は骨を埋めると、無我夢中で我が愛車――タイムマシンに飛び乗り、発車させた。元来た時代――今いた場所より未来へと。
 それにしても今の奴ら、変な奴らだったな。
 ずい分色とりどりの布切れを体中につけていたし、目に丸いガラスをつけている奴もいた。手なんかひょろりとしていたし、何よりあの大きな体……。あれが過去の人類の姿とは、信じられん。
 しかも、嬉しそうに私が埋めた死体の骨を掘り出すとは……。
 まあ、奴らにアレを発見されたところで、私の殺人が現代の人々にばれるわけはない。早いところ、忘れてしまおう。


 科学の進歩により、何もかも機械がやってくれ、自分で考える必要のなくなった小さな脳を持つヒトを乗せ、タイムマシンは、彼がいるべき時代へと帰っていった。



←一方通行      ヒ→


photo by 塵抹